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1-2 図面の規格

図面は誰が作っても同じ物ができなければいけない

前回も少し触れましたが、図面をもとにモノづくりをする時には、口頭などによる補足説明なしで誰が作っても同じモノが作られないといけません。
誰もが同じ物を作るためには図面の描き方にルールが必要となります。
図面を描く人はそのルールに則り図面を作成し、製品を作る人はそのルールを理解した上で図面を読み取り現物を形どっていきます。
すなわちモノづくりの大前提として、すべての人が共通の「図面のルール」を知っている必要があります。

図面のルールを決める”JIS”って何者?

では、その「図面のルール」は誰が決めているのでしょうか。

みなさんは”JIS(ジス)”という言葉を聞いた(見た)ことがありますか。
“JIS”は「Japanese Industrial Standards」の略で、訳すと「日本工業規格」となり、要するに産業製品などをルール化をすることにより標準、規格を定めている日本独自の国家規格です。
例えば机の脚を固定しているボルトは、長らく工具箱で眠っていた物であっても、新品で買ってきた物であっても、もともと使われていたボルトとメーカーが違ったとしても同じように使えます。これはJISによりボルトのネジ径やピッチなどの製品規格が決められており、通常日本国内で流通するボルトはJISに基づいて製作されているからです。

同様に図面には、用紙の大きさ、線の種類や太さ、寸法の入れ方などがJISにより規格化され「図面のルール」が決められています。

なお、JISはもともと主に日本で流通する製品の規格を定めるものでしたが、輸出入の増加につれ諸外国との摩擦を起こさないように、この二十数年で徐々にISO(アイエスオー/イソ)と呼ばれる国際標準化機構(International Organization for Standardization)に近づけるよう変更されてきました。先ほどのボルトを例にすると、現在の六角ボルトの規格JIS B 1180にはISOに倣い部品等級をA,B,Cと定めていますが、JI B 1180附属書には「ISOによらない六角ボルト」として従来からのJIS(これを旧JISといいます)として許容差上,中,並と定めて現在も使用されています。これは製図の規格も同様です。

また、若い方は学校で「力の単位は”N”(ニュートン)」と習ったと思いますが、私のような年配者は”kgf”(キログラムフォース)と習いました。これも日本の計量法改正により国際単位系(SI単位系)に合わせてきた結果です。

しかし、従来からの規格も日本国内だけを見れば主流として流通されている物がまだまだ沢山あるので、旧規格と併用されているものも多数あります。さらに各会社ごとに独自の規格があったりローカルルール的なものがあったりと覚えることが沢山あり、「図面のルール」があると言ってもどの場面でどの規格を使えばよいのか若い設計者の皆さんは苦労することが多々あるかもしれません。
まずは本ブログではJISに限定して説明していきたいと思います。

製図で用いる主なJIS

製図で用いる主なJISは下記表になります。

なんだかとても沢山の規格がありますね。
図面を描く上でJISの規格番号を覚える必要はありませんし、全ての内容を完全に覚える必要もありません。設計者として年数を重ねていく中で、よく使う規格は自然に覚えるし、普段使わない規格においても調べ方を知っていればほとんどの場面で問題になることはありません。
規格の詳細を調べたい場合は規格番号から探すと楽なのでいつでも見れるところにあると便利です。

まとめ

・図面を描くにはルールに則る必要がある
・ルールはJISにより規格化されている
・会社独自の規格も存在する
・製図に関する規格は沢山あるがすべてを完全に覚える必要はない

次章からはいよいよ製図のルールについてひとつずつ紹介していきます。