投影法とは
この章からは製図のルールをひとつずつ紹介していきます。まずは図面の基礎である「投影法」です。
図面の投影法とは、三次元の物体を平面上に投影するための方法です。具体的には、物体を光源からの光線によって平面上に投影することで、物体の形状や大きさを平面上に表現することができます。
投影法には主に正投影法(図1)と斜投影法(図2)の2つの方法があります。
正投影法は、物体を光源から垂直に照射することで平面上に投影する方法です。この方法では、物体の長さや形状を正確に表現することができますが、視点が固定されているため、物体の奥行きや立体感が表現されません。
斜投影法は、物体を光源から斜めに照射することで平面上に投影する方法です。この方法では、物体の奥行きや立体感を表現することができますが、物体の長さや形状を正確に表現することができない場合があります。
機械製図では「正投影法」が用いられます。
投影法では、物体の一面を投影しただけであり、投影する物体が薄い板でない限りは反対側の形状は投影されないため、見えていない面が平らなのか凹凸があるのか、穴があるのか無いのかはわかりません。
したがって物体の全体を知るためには複数の投影面が必要になります。(図3)
第一角法と第三角法
垂直線と水平線をそれぞれ平面と仮定し、互いに直角に交わらせると図4のように空間が四つに仕切られます。この空間の右上を第一角、左回りに第二角、第三角、第四角といい、第一角内に物体を置いて平面、すなわち物体の上方から見た投影を下側の水平平面に、物体の右から見た投影を左側の垂直平面に投影する方法を第一角法(図5)といいます。以下それに準じ第二角法、第三角法(図6)、第四角法と呼称されます。
以上のうち、第一角法と第三角法が現在世界的に主流で使われているもので、日本の機械製図では投影法は第三角法によるとJIS B 0001に定められています。
なお、第一角法はドイツなどで使われておりドイツから取り寄せる機器の図面を読み取る際に必要となるため、第三角法同様に第一角法も理解する必要があります。
第一角法と第三角法では下図に示すように図面の配置がそれぞれ逆になります。(図5、6)
上記の図5、6からわかるように第一角法は見た方向の反対側へ投影図を描き、第三角法は見た側へ投影図を描きます。全く同じ物体を図面にする場合でも第一角法と第三角法とでは全く異なる表現方法となるわけです。
そのためその図面の投影法がどの角法により描かれているのかは、図7の「投影法を示す記号」を各図面の表題欄に明記することになっています。
なお、各面はそれぞれ正面から見た図を正面図、右から見た図を右側面図、上から見た図を平面図(上面図)、後ろから見た図を背面図、左から見た図を左側面図、下から見た図を下面図と呼称します。
またその他斜めから見た図や断面図など、ここで重要なのは「物体を製作するために必要な投影面」はすべて図面に描く必要があるということです。
逆に物体を製作するために不要な投影面は描く必要はありません。図面は物体を投影した形状を表す線や寸法などとセットで構成されますので、寸法が入っていない投影面は不要な投影面ということになります。
実は不要な投影面を描いてはいけないというルールはないのですが、不要な物に時間を費やし設計原価を押し上げることは好ましくありませんので、必要最小限の投影面で図面を描くのも技術者の技量の一つと言っていいでしょう。
余談ですが、建築業界は第一角法を使用しているため、建築業界から機械設計へ足を踏み入れた技術者の多くが慣れない第三角法に苦労しているのを見ます。慣れとは恐ろしいもので一度身についたものはなかなか抜けない、言い換えれば基礎を間違って覚えると後で苦労することになるので、図面の基礎である投影法はしっかりと理解習得してほしいと思います。
まとめ
・「正投影法」を使用し、物体の形と大きさを正確に描く
・「第三角法」を使用し、物体を見た側に投影図を描く
・物体を製作するために必要な投影面はすべて描く必要がある